長いトイレ(ふつうエッセイ #198)

寒いと、尿が近くなる。(品のない書き出しで恐縮です……)

東京都内、今日は終日雨。自転車通勤は諦め、コワーキングスペースまで歩くことにした。

傘をさし、ラジオを聴きながら。寒かったし、靴も濡れてしまったが、普段は流れてしまう景色は楽しいものだ。「あれ?こんなお店あったっけ?」といった発見もある。

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さて、トイレのこと。

歩き出してすぐのタイミングで、トイレに行きたくなってしまった。

外出前にトイレに行ったので、想定外の事態。朝、コーヒーを飲んだのがマズかったか。

コンビニに立ち寄ろうとも思ったが、運良く(運悪く)、交差点の信号が青になったりして、そのままコワーキングスペース近くのオフィスビルまで来てしまった。そこで限界を迎えたので、オフィスビルのトイレを拝借させてもらった。

トイレの看板を目にし、ひと安心と思ったが……なんとトイレまでの道のりがほんのちょっと長い。

長いといっても、想定のツーステップほどだけど、くねっ、くねっとした蛇行を2回し、トイレの扉を開けた。(女性用トイレは奥だったので、女性は想定よりスリーステップ多いことを覚悟しなければならない)

何とか失禁は免れたのだが、危ないところだった。

我慢し続けるだけならもっと我慢できたが、「ひと安心」が入ることによって気持ちは緩む。「ひと安心」後の長いトイレというのは、かなり危険なのだ。

そういえば学生時代、就職活動のとき、緊張のため腹痛に襲わることがよくあった。トイレを見つけて慌てて入るものの、何度も「使用中」の憂き目に遭った。そうした経験を重ねることによって、便器に座るまで「ひと安心」をしないよう、トイレを見つけても気を張り続けていたなと。

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「ひと安心」は、基本的には良いことだが、直後に「実はリラックスしてはいけなかった!」という事態が起こると、動揺してしまう。

2020年のコロナもそうだったかもしれない。緊急事態宣言が明け、Go To トラベルキャンペーンが始まったあたり、「ひと安心」のムードが広がっていた。その後で一気に感染拡大が進んだときの反動はけっこう大きかった気がして、それは「ひと安心」が間に挟まってしまったからかなとも思っている。

楽しいことも、大変なことも、世の中にはたくさんある。

「ひと安心」が、皆さんにとっての適度な休憩になるよう祈っています。