高輪口と港南口(ふつうエッセイ #553)

品川駅の高輪口と港南口は、どちらも活況がある。都心の主要駅だから当たり前ではある。しかし、それぞれの降り口のイメージは全く異なるから面白い。

高輪口は、商業施設とビジネス街のハイブリッドだ。品川プリンスホテルが真ん中に位置し、映画館や水族館、アパレルショップなどが脇を固める。かつて高輪口にオフィスがあった際、インバウンドで日本を訪ねた人たちと、暗い顔した日本人サラリーマンの両方がいて、なるたるカオスだと感じたものだ。

港南口は、100%ビジネス街だ。だから飲み屋も豊富、高輪口よりも安酒を喰らえるような店もけっこう目立つ。そして看板広告も「薄毛広告」や「マッチングアプリ」、「美容整形」などが鎮座する。そういう意味でも、高輪口とは全く異なる様相を呈している。

品川で働いたのは4年弱の間だ。

その後、渋谷が最寄りのオフィスの会社に転職したのだが、道行く人たちのカラーが全く違うのにも驚いた。東京とは、グラデーションでなく、はっきりとマーケティングによってカラーが分断されている。

分断されて、同質な人たちと交わるのだから、それはそれなりに快適なものだ。そのムラに馴染めない人にとっては、なかなか居心地が悪い。その辺の流動性が高まると、東京とは、多様でカラフルな生活圏へと早変わりする街になるだろう。