更新し続ける夫婦の形(遠又香さん #2)

「これからきっと”私たち”という主語が増えると思うけど、”わたし”と”あなた”であるということを忘れないでね」
これは、私が結婚したときに、尊敬している友人から贈られた言葉だ。

新婚当初、”私”という人格よりも、”私たち”という人格で扱われることが増え、戸惑いを感じていた。

「今後どんなふうに生きていくの?」という問いに対して、今までは思いついたことを意気揚々と話していたが、私個人の意見でも、夫婦の総意として捉えられることが増えたのだ。それから、想像以上に自分の言動が、家族であるパートナーに影響を与えるということを意識するようになった。

そんな変化に不自由さを感じる一方で、私という”一人のシステム”から、夫婦という”二人のシステム”にアップデートされたことに、面白さも感じた。

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「どうやったら楽しく、夫婦というシステムをアップデートできるのかなー?」

そんな純粋な好奇心から、『1年夫婦更新制度』という仕組みを我が家に取り入れることにしてみた。

仕組み自体はいたってシンプル。
毎年の結婚記念日に1年間を振り返り、最後に夫婦関係を今年も続けるかお互いに確認するというもの。お互いに「YES!」と答えたら、次の結婚記念日まで、夫婦関係が継続されることになる。

一般的に結婚するということは、永遠に相手のことを愛し続けますと誓うことなのかもしれない。

けど、多かれ少なかれ、日々人は変化するし、何も考えずに自動更新できるほど、結婚生活は単純じゃない。

結婚当初思い描いていた通りに、全てが進むなんてことはきっとないし、豊かな時間がたくさん生まれる一方で、不満ももちろん顔を出す。

毎日、お互いに思っていることを伝えられたらいいけれど、あんまり現実的ではない。

なので、あえて1年に1回立ち止まり、お互いについて何を思ってみるかを問うてみる。
そうすることで、お互いの変化に合わせて、固定化しやすい関係性をアップデートする。

そんな試みを始めてみたのだ。

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