流れ(ふつうエッセイ #528)

ラップには、フロウ(flow)という技法がある。

声の高さや強弱、速度に変化をつけて、曲やリリックを印象づけるテクニックのことだ。一般的に「フロー(流れ)」といわれているものとは、ちょっと趣が違うように感じる。

文章を書く際にも、「流れ」というのはとても大切である。

例えば原稿を書くときは、執筆以前に構成を描いておく。構成とは、家でいう設計図にあたるもので、設計がおぼつかなければ原稿もフラフラで倒れてしまうだろう。

……僕はこういった構成と流れを同一視していたけれど、でも、構成と流れとは厳密にいえば異なるものではないだろうか。

改めて、流れとは何だろうか。

川は、さらさらと上流から下流へと流れていく。ゴツゴツした岩場や石もあるけれど、水は、とめどなく海へと向かっていくのだ。この「流れ」は、ちょっとやそっとのことでは止められない。

流れとは自然なものだけど、確固たる意思を有している。柔らかだけど、力強い。「流れに身を任せる」とはよくいったもので、それくらい求心力があるものなのだ。

流れ。

ゆらゆらしているけれど、いざとなったら、流れに身体も心も預けてしまうのか。

流れを止める。そんなに容易いことじゃないんだろうな。