風邪の合図(ふつうエッセイ #517)

風邪の合図といえば、咳だ。

ゴホン、ゴホンと咳き込めば、「あの人、風邪ひいているのかな?」と思う。

ただ、風邪=咳ではあるが、咳=風邪とは限らない。

例えば僕は幼少期から喘息症状に見舞われていて、いまでも空気が乾燥する冬〜春にかけて、しばしば咳き込んでしまう。また少し前に新聞を眺めていたら、アスベストの被害者は、風邪でもコロナでもないのに常時咳き込むという事態に見舞われているそうだ。

咳をするのはつらい。それだけで気管支が痛み、身体にダメージがある。

だけど、咳は風邪の合図のように見做されて、周りから嫌悪感をぶつけられることがある。そこには本来、人それぞれの事情があるはずなのに。ざっくりとイコールでつなげられてしまうのだ。

安易に、安直に、イコールをつけていやしないだろうか。

イコールをつけてはいけない物事が、世の中にはたくさん存在している。分かりにくいものを分かりやすく見做したいのが人間の性だけど、できる限り、その本能には抗っていたいと思うのだ。