2通目「私はそれ、最高だと思う」(山本夕紀さん #2)

幼いころ、まだ誰にも知られていない私の良さを見つけてくれたのは、父と母だった。

そりゃあ親なんだから、自分の子供が好きなのは当たり前かもしれない。ただ、彼らのすごいところは、私のことを「愛する我が子」として褒めているのではなく、人として敬意を持って称賛し、応援してくれていたことだ。(本当のところはわからないけれど、少なくとも、私はそう受け取っている)

小学生の頃、お絵かき教室で絵を描いた。描いた作品は、招き猫。
それを見た父は「ゆうちゃん、この絵は最高だ。俺には真似できない」そんな風に言って、金色の額縁に入れ、時に玄関に、時にリビングに飾り、しょっちゅう「ええなぁ」と言ってくれた。

ちなみにその絵は、20年以上経った今でも、立派に家に飾られている。

踊るのが好きで、創作バレエを習わせてもらっていた。
初めての舞台、ステージで目一杯楽しんで踊る私を見て、母は言ってくれた。
「ゆうちゃんは舞台で輝くね。あなたは、ステージの上で人の心を掴むよ」
それ以来、もっと自信を持ってたくさんの舞台に立てるように、発表会前には演技する曲のCDを買い、二人で毎晩のように秘密の特訓をしていた。秘密の特訓はとても楽しかった。

そんな風に私の両親は、「これはいいぞ!」と思ったことには素直に感動し、それが続いていく過程を、一緒に楽しみながら応援してくれた。

そのお陰で、私は今でも招き猫の絵を見て当時の自分を尊敬できるし、舞台の上に立ち続けることに何の抵抗もなく生きることができて、それが転じて、気がつけばポッドキャストを始めてしまっている。

二人が私にしてくれたのは、「自分は、あなたのこれが最高だと思う」と、少なくとも世界に一人、私のファンがいることを教えてくれたということ。そして、これからもそのことを続けていけるように、それぞれの方法で見守り続けてくれたということだと思う。

こんな経験があったから、私は今日も朝起きて、私のままで生きていこうという心持ちでいられているように思う。

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