プロ野球界が、賑やかだ。
久しぶりに「スーパースター」と呼べる存在が現れたからだ。千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希さん。高校卒業後にプロ野球の世界へ、まだ20歳にもかかわらず、28年ぶりに完全試合をやってのけた。
13連続奪三振など、105球を投じた内容の完璧さに異論の余地はない。時速160キロを当たり前のように投じられる能力の高さは異次元だ。
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その中でも僕は、朝日新聞に掲載された、とある発言に唸らされてしまった。
https://www.asahi.com/articles/ASQ4C36QWQ4BPTQP00N.html
時速160キロの球を投げられる理由を問われて、佐々木さんはこう答えたと書かれている。
「身長ですよ」
「体が大きい方が腕も長く、生み出せるパワーが大きいと思います」
そりゃ、そうだろうなと多くの人が思っていたことだ。ダルビッシュ有さん、大谷翔平さんなど、近年のスーパースターは恵まれた体格をしている。持って生まれた「もの」が違うのだ。
それが敢えて語られてこなかったのは、「それを言っちゃあおしまいよ」という感じで、努力することの虚しさを顕示しないという配慮だろう。でも、佐々木さんの完璧さの前に、ポテンシャルや才能の有無による違いは、残酷なまでに血の滲むような努力を無力化させてしまう。
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世の中には、成功者と呼ばれる人たちがいる。
「自分は天才ではないので、とにかく努力するしかなかった」とか「運が良かったんだと思います」とか、そんな発言に終始することが多い。それも本音なのだろうが、佐々木さんの言葉の前に、ちょっとした欺瞞のようなものも感じなくはない。
欺瞞と書いたけれど、もしも僕が「成功」というものを手中に収めたときに言えるだろうか。
才能ですよ。
いやあ、言えないなあ。だって、才能なんて、ないんだもの。
明らかに人と違うものを有している佐々木朗希さん。それをさらりと認められる潔さもある。
まいったな。
どこをどう切り取っても、スーパースターとしか言いようがない。
そんな人の活躍を目の当たりにできるのは、きっと幸せなことなんだろう。