間違ったこと、言ってるかな?(ふつうエッセイ #412)

口にしてから、自己嫌悪に陥いる言葉がある。

タイトルの「間違ったこと、言ってるかな?」もまさにそうで、絶対に使いたくないし、仮に相手に言われたらその相手と絶交したくなるくらいだ。

なぜなら、たいていの物事は「正しい / 間違っている」で察ることができないからだ。グラデーションもあるし、立場によって正否は180°異なることもある。

しかも「間違ったこと、言ってるかな?」という言葉には、言外に「いや、君の方が間違ってるよね」という反語的な意味も込められている。「間違ったこと、言ってるかな?」と問う人間は、「いいえ、間違っていません」の答えしか求めていない。そんなの、卑劣なコミュニケーションじゃないか。

今日は長男のちょっとした粗相に対して、そんな言葉をかけてしまった。

口にしてから後悔したのは、その言葉を発したことだけではない。無意識の中で、その言葉を是とする気持ちが多少はあるから、言葉にしてしまったのだ。

無意識の加害行為に自覚的でありたい。そう常々思っているのに、僕の言葉は、残念ながら相手を傷つけてしまった。

ごめんね、と長男に謝っただろうか。たぶん、謝ってない。

遅まきながら、明日謝ろう。遅れてしまったけれど、謝らないよりも、謝った方が良いに決まっている。