2071年はやってくる(ふつうエッセイ #22)

今が2021年だから、50年後は2071年である。

「そりゃそうだろう:という感じだが、地球が滅亡しようと宇宙が破裂しようと、目に見えない存在である時間はそのまま流れていく。時間を認識できる生物がいなかったとしても、きっちりと2071年はやってくるのだ。

小難しい話をしたいわけではない。

2071年になったとき、僕はギリギリ生きている。もし僕が2021年を語る機会があるとしたら、僕はどんな風に2021年を語るだろうか。

コロナ禍でずーっと緊急事態だったよと語るだろうか。
有名人が何かを発言するたびに重箱の隅をつつかれていたよと語るだろうか。
総理大臣がポンコツだったと語るだろうか。
逆に総理大臣はめちゃくちゃ頑張ってたよと語るだろうか。

あるいは、2021年のことなどすっかり忘れて、何も言葉を持てずにいるかもしれない。

* * *

例えば「1998年ってどんな時代だった?」と23歳の友人に聴かれたとする。

僕は咄嗟に言葉に詰まるだろう。ノストラダムスは確か1999年だったし、モーニング娘。はもうちょっと前だったような。そのときの総理大臣が誰かも記憶がないし(小渕恵三さんらしい)、フランス開催のワールドカップでどこが優勝したのかも憶えていない(開催国のフランスがブラジルを3-0で破り初優勝を果たしたらしい)。

多くの人が、1年刻みでは「何があったか」を記憶できない。

だから「1990年代」というように10年刻みで時代を捉えようとするし、あるいは昭和や平成といった大きな時間軸で「昭和は○○だった」と印象を語る。

でも実際のところ、1年ごとにそれなりに大きなイベントは発生するし、何なら1ヶ月ごとに驚くような報道がなされている。だからこそ物事をシンプルにするために「忘れる」という意思決定を無意識にするのだろうけれど。

でも、それがぐちゃっとひとまとまりになって「過去」として清算されるのだとしたら、ちょっとだけ寂しい気がする。

2021年はどんな時代だったか。あと3ヶ月しかないけれど、自分なりに言語化を試みたい。2071年に、2021年のことを語る。そんな日をちょっとだけ想像しながら。