社会学者、上野千鶴子さんの寄稿を読んだ。
参考 「ムカムカする」寄稿:上野千鶴子(社会学者) ~クロスレビュー「フェミニズムズ/FEMINISMS展」成田悠輔氏・鹿島茂氏評を受けてARTnews JAPAN上野さんの寄稿の前に、成田悠輔さんのテキストを読んでいたら「ふむふむ」と無批判に受け入れていただろう。僕自身のジェンダー性「も」真摯に省察しなければなるまい。
上野さんがこれまで見てきた荒野、その全てを想像することはできない。でも、そのありようを思うと背筋がシャンと伸びる。先人の進んできた道を軽んじてはいけない。やりたいことをやるのは自由だけど、物事の歴史や背景についての配慮の視点は常に持っていよう。
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さて、ムカムカすることについて。
ムカムカするよりも、ムカムカしない方が良いとされている時代だ。「そんなことで目くじら立てるな」と冷たい声を浴びせられる。
そんな世の中だから、アンガーマネジメントという言葉も広く認知されてきた。
「アンガーマネジメント」という言葉は、そもそもアメリカで生まれたものだ。日本でも急速に広まり、いまやテレビタレントも口にするようになった。いや、別にテレビタレントが口にしたって構わないのだが、テレビというメディアの特性上、どうしたって何事も歪んで広まってしまうのが常だ。
アンガーマネジメントとは、怒らないための自己管理方法ではない。
怒る必要のあるものと、そうでないものを区分けする。「そうでないもの」の原因になった人間関係の不和や社会でのストレスについて、「怒る前に、まずは状況を冷静に見つめましょう」という教えである。
マジックワードのように、「まずは6秒間、我慢しましょう」と勧められる、6秒間で、人間の怒りはクールダウンされるというのだ。SNSで何らかのツイートが出回ってきたとき、感情的に「リツイート」や「いいね」を押してしまう人がいる。たしかにリスクも大きく、深呼吸の必要があることは僕も否定しない。
だからといって、とにかくムカムカしないようにという考え方は、あまりに視野が狭いように思うのだ。
誰かが怒っている。それを「フェミ」とか「原理主義者」とか、軽薄なレッテルによって自分の関与の外へ追いやってはいけない。たしかに君はムカムカしなくなって平穏を手に入れたかもしれない。でも、ムカムカしなくなったことで、失ったものの大きさを想像したことはあるだろうか。
「ムカムカしようぜ!」なんて、言うつもりはない。
でも、そのムカムカした感情を、ただただ押し殺すのでなく、向き合ってみるのはいかがだろうか。そこから何かアクション / リアクションする必要はない。向き合うだけで、十分お釣りがくるはずだから。