モノクロという色彩感覚(ふつうエッセイ #234)

マイク・ミルズさんが監督を務める映画「カモン カモン」を観てきた。

詳しくはnoteに感想を書こうと思うが、素晴らしい作品で、何度も鳥肌が立った。

何事も「分かりやすさ」が求められる時代において、物語のラインを複数設けるような、ある種の「分かりづらさ」を散りばめるのはリスキーなこと。それでも監督は勇気を持って作品を作ったわけだし、それを映画ファンがみな歓迎している。控えめに言って、美しい関係だなと思うのだ。

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「カモン カモン」は、全編をつうじてモノクロで描かれている。

しかし、そこには豊かな色彩がある。監督の色への造詣の深さが、垣間見れるような気さえするのだ。

現代の作品でも、あえてモノクロで描かれているものは少なくない。

Apple TV+で配信された映画「マクベス」もモノクロだったが、デンゼル・ワシントンさんの迫真の演技に加え、圧倒的な映像美は見事で、モノクロだからこそ感じ取れる登場人物たちの機微をクリアに切り取っていた。

商業広告では、目立つために派手なプロモーションを打つことが多い。

競合よりも、他の広告よりも、何ならテレビ番組よりも目立ちたい。そうでなければ、消費者に認知されない……そんな思い込みがあるのではないかと思ってしまう。

でも、そうとも限らないはずだ。

映画と商業広告は、異なる表現方法が求められるけれど、根本的な部分で通ずる要素もあるはずだ。

そんなことを「カモン カモン」の余韻の中で、考えていた。素晴らしい作品なので、ぜひお近くの映画館で観に行ってください。(原題の「C’MON C’MON」をそのまま邦題に採用しているのも良いですね)