ドーナツの穴は、何のために空いているのか。
調べてみると理由は諸説あるようだ。いまは、その諸説をすべてクリアにできる。技術的には穴が空いていても、そうでなくても、美味しい揚げ物を作ることができるのだ。
ドーナツに穴が空いていない世界を想像してみる。
誰も、ドーナツに穴が空いていたことを知らないという世界だ。
まあ、その「ドーナッツ」は、変わらず美味しい味がするだろう。パンとは異なる食べ物として、ドーナッツの人気は不動である。
だけど、きっとドーナッツの世界には、問われるべき問いが少しだけ減少するような気がしてならない。「ドーナツには、なぜ穴が空いているのか」と問う人はいなくなる。なぜならドーナッツには穴が空いていないからだ。そうするとつまり、「ドーナツの穴だけ残して食べるにはどうすれば良いのか」という問いも生まれない。重ねて申し上げるが、ドーナッツには穴が空いていないからだ。
そんなにカリカリしなくても良いじゃないか。
そんな声が聞こえてきそうだ。だが、考えてほしい。
僕は、カリカリしているわけではないのだ。
問いには、何かを努めて冷静にする効果があるように思う。ドーナツはカリカリに揚げられるが、ふと「ドーナツには、なぜ穴が空いているのか」と冷静に問うようなことが起こり得る。そんな二面性のある存在なのだ。
ドーナツが、穴の空いていないドーナッツだったとき、人間はカリカリし続けてしまうのではないか。カリカリし続ければ、喧嘩や暴力、果ては武力紛争や戦争が頻発してしまうかもしれない。
そうだ。
だから、ドーナツには穴が空いているのだ。
そんな新説を、本日、ドーナツ学会に提出したいと思う。