地元駅前のコモンセンス(ふつうエッセイ #63)

長い間、少なくとも僕が物心ついたときから、地元駅前の駐車スペースには暗黙のルールが存在する。

駐車スペースと書いたけれど、厳密には「駐車禁止」と明記されている。ただそれなりに乗降者が多い駅なので、一時的な駐車は黙認されていて。ひっきりなしに一時的な駐車が行なわれ、乗客が職場へ、あるいは家路へと向かっていく。

暗黙のルールとは、車両を斜めに駐車するというものだ。

歩道に対して平行に駐車しても良いし、直角に駐車しても良いのだけど、ちょうど45度くらいの斜めの角度で車を出し入れする。平行に駐車すると車のスペースが限られるし、直角に駐車すると出し入れに時間がかかる。なので理にかなっているのだけど、長い間ずっと「斜め45度」が暗黙のルールになっているのは興味深いと思ったのだ。(もちろん厳密には駐車禁止なので、駐車用の白線などが仕切られているわけではない)

都市に比べれば、地方には人口の流動は低い。その場所にずっと留まっている人が多いため、暗黙のルールが成立しやすい。警察も取り締まりができなくはないのだけど(交番は目の前にある)、駅前の駐車で怒られている人は聞いたことがない。黙認していた方が、社会は滑らかに回っていくのだろう。

もちろん、こういった状態を手放しに肯定しているわけではない。出入りが多いということは交通事故のリスクも高くなるからだ。

それでも、こういった「知恵」のようなものが地方を形作っているのは間違いない。なるべくオープンでポジティブな方向に、そういった知恵が向かっていくと良いなと思うのだ。