コアラ、コワラ(ふつうエッセイ #52)

もちろん正しいのは「コアラ」なんだけど、その正しさの根拠とは何だろう。

英語ではkoalaと表記する。カタカナに置き換えた際に「コアラ」が正しいのは理解できる。

ただしそれは表記上の話であり、声として発せられたときに「コワラ」と聞こえるならば「コワラ」でも正しいのではないかと思ったりしている。体育をたいく、信号機をしんごおきと発話するように。文字で表現する場合、ある程度の統一性が必要だとは思うけれど、それは「コワラ」と表現したい人の理屈を無視している。

関東、とりわけ東京の人たちが話す言葉が「標準語」とされている。

標準語とは、なかなか格式のある言葉だと皮肉も言いたくなるが、「標準」と見做されないたくさんの言葉たち(方言と言われているもの)は「コワラ」的な無念を抱えているのではないだろうか。

言葉に正しいも正しくないも存在しないはずだ。もっと無遠慮に、誰にも配慮せずに、言葉を扱っても良いのではないかと思うのだ。