ポケットに手を入れると(ふつうエッセイ #48)

子どもの頃、父親に「ポケットに手を入れてはいけない」と注意を受けたことがあった。

温暖な季節ならまだしも、冬にこのルールはキツかった。残念ながら親の躾は守れずに、僕はだいたいジャケットのポケットに手を突っ込んでいる。

ポケットに手を入れてはいけない理由は二つだ。

一つ目は、転んだときに危ないからというもの。手で身体を守ることができず、顔などを打ってしまう危なさがある。手で守れれば大きな怪我を防ぐことができる。

二つ目は、マナーが悪いからというもの。横柄、生意気という印象を与えてしまうというもの。確かに全校朝礼などで、校長先生が話をしているときに生徒がみな手をポケットに突っ込んでいたら、それこそツッコミたくなるような気がする。

だけど、なぜポケットに手を入れることはマナー違反に繋がるのだろうか。横柄、生意気だという印象を与えてしまうのだろうか。「ポケットは物を入れるための場所だから」というインターネットサイトを読んだのだが、いまいち納得できない。物を入れることもできるけれど、物が入っていなければ手を入れたって構わないじゃないか。

ポケットに手を入れてプレゼンテーションをしている外国人の動画を観たことがある。手の入れ方や服装などが違うのか、とてもスマートに見えた。国民、あるいは国民性の違いなのだろうか。この辺のモヤモヤは、なかなか解消しそうにない。