過ごしやすいの罠(ふつうエッセイ #23)

過ごしやすい気候になってきた。

ふつうに生活できることは何よりなのだが、そんなときに陥る罠というのもある。

例えば、ソファでの寝落ち。暑かったり寒かったりすれば、わざわざ気温の高い(低い)部屋に留まろうとはしない。きちんと冷やされた(温められた)寝室に移動して、ゆっくりと眠ることができる。

エアコンをつけない季節は、どこでも眠ることができる。ふかふかしたソファは寝心地が良く、お酒も飲んでいないのに、昨日は深夜2時まで眠りについていた。

ある人が地域移住がブームの昨今について嘆いていた。「地方に行くと、みんなノンビリしてしまうんだよね」

その真偽はさておき、そしてノンビリすることは最高なことじゃないかと思いつつ……。確かに東京は、人の数も多く、毎日がせかせかと過ぎていくような感覚がある。常に情報に晒され、落ち着かない。だけどそれは逆に、情報を収集する機会があるということを意味する。

忙しいときにこそアイデアが閃いたり、締め切りのプレッシャーがかかったときに作品が仕上がったり。それらは決して心地良い気分ではないはずだけど「過ごしにくい」ことがもたらす効用ではあるように思う。

理想を言えば、過ごしやすい・過ごしにくいに関わらず高いクオリティがアウトプットできれば良いのだが、なかなかそうはいかない。頑張り時を見極めて、たまには「過ごしにくい」ような環境にも足を運び、自分をスパルタに鍛えるのも良いかもしれない。