スポーツ選手のセカンドキャリアや競技者としてのあり方が変化し、アスリートの活動にも多様性が生まれている昨今。箱根駅伝に出場した経験を持ち、現在はプロランナーとして競技を続けながら地元で地域貢献活動を行う人がいる。須河宏紀さんだ。
須河宏紀(すがわ ひろき) 富山県利賀村(現・南砺市)出身。高校時代から長距離選手として全国高校駅伝、都道府県駅伝に3年連続で出場。中央大学に進学し、2年次から3年連続で箱根駅伝に出場する。卒業後は横浜DeNA、サンベルクスと新興チームに加入。横浜DeNAでは同チームのNY駅伝最高順位となる5位に貢献。2019年延岡西日本マラソン優勝、2019年富山マラソン優勝。2021年4月よりNDソフトウェアに所属。年間の半分近くケニアでトレーニングを行っている。(note)
須河さんは富山県にある、人口500人程の利賀村で生まれ育った。高校から地元を離れ、ランナーとしてキャリアを築いている。箱根駅伝出場や、強豪の実業団チームでの経験を経て、2年前にプロランナーへ転身。現在は、競技活動の傍ら、地元の地域活性に向けた活動を行っている。
須河さんは今夏、市民ランナー向けに2泊3日ランニング合宿「TOGA SUMMER CAMP」を開催した。
トレーニングをするだけでなく、利賀村の自然や食を味わい、地元の人々との交流を促す。ランニングという入口から利賀村の魅力を知ってもらうという企画だ。
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コロナ禍でランニング合宿を開催する意味とは
ランニング関係の仕事をしている筆者。私自身も市民ランナーとして走り続けている。
須河さんと筆者は、彼が2年前プロランナーに転身して間もない頃に、あるランニングイベントにお互い参加していたことがきっかけで知り合った。市民ランナーとして走り続けてきて、大学でまちづくりを学んでいた筆者。彼のやりたいことや想いに興味を持った。
今年5月、須河さんがTOGA SUMMER CAMPの開催を告知していて、すぐに申し込んだ。本人から聞いていた利賀村という地域がどんな場所か知りたかったし、ランニングを通じて地域貢献をするということのリアルを、この目で見たかった。
コロナ禍の影響を受け、多くのランナーが一同に会して競い合うリアルなマラソン大会は、中止やオンライン大会への移行を余儀なくされている。感染症への対策という意味では「しょうがない」という思いを持ちつつ、ランナーの一人として「大会」という大きな目標がなくなっていくことは、ランニングを続ける上でモチベーションを損ねてしまう。
そんな最中に、日本中の多くの地域からランナーが集まり、合宿を開くという。そして、地域貢献をしていくことに対してどのように考えているのか。その想いを知りたくて、須河さんへ取材を申し入れた。