薬を飲み忘れる(ふつうエッセイ #473)

普段、だいたいにおいて健康に恵まれている僕だが(幸運なことだ)、医師から処方された薬を飲む機会が時々、ある。

まれに風邪をひくときと、春先の花粉症シーズンだ。

花粉症はもはや20年以上の定期イベントなのだが、いつだって耐え難く、前年の12月から薬を飲み始めるという徹底ぶりで防御策を講じている。

僕は、薬を飲み忘れることが、ない。

もちろん100%きっちり飲みますよ、ということではないのだが、薬を処方されると朝昼晩、食後にきっちり飲む。それは当然のことだと思っていたけれど、意外に薬をきっちり飲む人ばかりではないらしいことに、最近気付いた。まあ「忘れちゃう」というやつだ。(調べてみると、「お薬リマインダー」なるアプリもあるらしい)

別に「忘れちゃう」ことを批判したいわけではない。僕だって、色々なものを忘れる。名刺も忘れれば、息子の保育園バッグを忘れる。公共料金の支払いもたまに忘れるし、炊飯器のスイッチも押し忘れたりする。

だけど、薬を飲むことは、忘れないのだ。僕の薬もそうだし、息子がもらってきた薬だって飲ませることを忘れない。

たぶんこれは、健康への意識というよりは、「つらくなりたくない」ということなんだろう。保育園バッグを忘れても家に取りに戻れば良いし、炊飯器のスイッチを押し忘れても「サトウのごはん」を温めれば良い。だが、「つらい」状態というのは、即時的に直すことはできない。ちゃんと薬を飲んでいることで、ある程度花粉症は予防できる。ちょっとずつ、息子の鼻水も止まっていく。……まあ、そのように信じているのだ。

薬もワクチンも、万能ではない。

身体に合わない薬を飲めば、体調には悪影響だ。だから、良い医師がかかりつけにいてもらった方が良い。良い医師と、適切な薬。備えあれば憂いなし、そう信じたいのだけど、いかんせん困るのは、近年の花粉症の威力が凄まじいことなんだよなあ。