雨が降ったら傘をさす(ふつうエッセイ #26)

イギリス人は雨が降っても傘をささない、という話を聞いたことがある。

確かにロンドンに旅行したとき、少量の雨でも、誰も傘をさしていなかった。季節が冬だったこともあり、パーカーのフードをかぶって、何食わぬ顔で彼らは歩いていた。

僕も昔から傘は苦手で、なるべく傘を持ちたくなかった。片手が塞がれてしまうと自由度が低くなるからだ。

とは言え、雨の日に片手が空いているからといって、できることは限られている。

歩きスマホは論外だけど、食べ歩きするわけにはいかない。どうせ濡れてしまうからだ。

でも、と思う。

音楽を聴いていたら、ふと手でリズムをとっていたりすることはある。空に向かって伸びをすることだってあるし、身体が痒ければさくっと撫でられる。普段は意識していないけれど、両手が自由に使えることで、できることは意外に多いのだ。

雨が降ったら傘をささなければならないというのは、思い込みに過ぎない。

そうだ、今日は傘をささずに出掛けるぞ!

と思ったのだけど。あまりの風雨の激しさに、踵を返して傘を取りに戻った。これもまた、人間ができるフレキシビリティというやつだろう。