落ち着く部位(ふつうエッセイ #630)

このエッセイは、男性に限定される話かもしれない。

いまどき性別とか、そういったことを前提にした話はどうかなとも思うのだけど……とりあえず論を進める。陰部のことについて。下世話な話ではない。38年間ともにしている陰部を触ると落ち着くという、極めて現実に即した話を展開したいと思っている。

陰部を触ると、間違いなく落ち着く。

だけど当然ながら、人前で陰部を触るわけにはいかない。例えばプレゼン前。いかに緊張しようとも、陰部は触れない。仮に陰部を触っているプレゼンターがいたら、即門前払いされてしまうだろう。

では、どうするか。

僕の場合、別の、落ち着く部位を触るようにしている。

最近のお気に入りは、お腹だ。ランニングを2年ほどサボり、すっかり皮下脂肪が蓄えられてしまったお腹。今や息子も僕のお腹が気に入っているのだけど、試しに僕も触ってみたら、まあ落ち着くのなんのって!服の上からでも、その膨らみは健在で。しかも触っていると、胃腸も落ち着くので一石二鳥なのである。

以前は、髪の毛、特につむじの周りをぐるぐる触っていた。これは意識的にというか無意識で、あんまり行儀の良いものではない。ワックスをつけていたりすると手がベタつくので不衛生だし、何より「落ち着きのない人」と見られるので、外では触らないように努めている。(でも、家の中では触っている。締め切りに追われた仕事をしているときに、つむじの周りをぐるぐる撫でるのはなぜか落ち着くのだ)

映画「THE FIRST SLAM DUNK」でも、似たようなシーンがあった。

主人公・宮城リョータが試合前に緊張しているとき、マネージャーの彩子から「緊張したら手をみよう」と示し合わせたのだ。試合中はさらに「No.1ガード」という文字を書き加えられ、緊張時やパニック時の対応が強化されていた。

野球でも似たような験担ぎの話は耳にする。例えば、投手がベンチからブルペンに向かうとき。少なくない投手が、白線を踏まずに渡るという験担ぎを試しているらしい。投手に限らず、諸々の所作をルーティン化しているアスリートは枚挙に遑がない。プロであればあるほど、緊張を解すための準備に抜かりないということだろうか。

誰もが、それぞれの「落ち着く」ための方法を考えている。

皆さんは、独自のルーティンを持っていますか?もしなければ、何か持ってみるのも良いかもしれませんね。

……って結論はきれいにまとめられているのに、冒頭で「陰部を触る」なんてエピソード、果たして必要だっただろうか。今日は推敲せず、サクッと公開ボタンを押すことにします。