映画「TAR/ター」に触発されて、走る。(ふつうエッセイ #624)

トッド・フィールドが監督を務めた「TAR/ター」を、先週木曜日に観た。

1回目の感想はnoteに書いたのでもし良かったら読んでみてほしい。が、僕にとってまだ消化不良感が残る映画で、これから何回か映画館に足を運ぶことになりそうだ。

映画の中で、主人公のターを演じるケイト・ブランシェットがハードなトレーニングにいそしむ場面がある。ジョギングのはずだが、800メートル走かのような疾走である。その姿は凛々しく、絶頂期から転落にさしかかっているマエストロのようには見えない。

終始、謎ばかりが残る映画だったが、週末を挟んで僕の心に残ったのは、「ああ、おれ走ろうかな」という感情だった。僕は2020年に入りコロナ禍でも毎日走っていたのだが、出走予定だったフルマラソンのレースが中止(エントリー料は返ってこなかった)になって、ぷつんと「走りたい」という思いが途切れてしまった。良き習慣だったはずのランニングが、もはや日常ではなくなってしまった。スポーツ全般に対して興味を持てなくなった時期でもあり、走るのを止めてしまったのだ。

2023年5月22日、ようやく走るのを再開した。

まずは息子を保育園に送った後、近くの公園をぐるっと一周。何てことない距離だ。でも、思っていたよりも汗をかき、家に着いたらシャワーを浴びないといけないほどだった。

ターのように、あるいはケイト・ブランシェットのように、僕は走っていただろうか。いや、さすがに今、あんなに凛々しくは走れていないだろう。

でもこうやって走り続けていれば、いつか、フルマラソンのレースに復帰できるかもしれない。3年後には、ウルトラマラソンにも再挑戦できるはずだ。

どうせ走るなら、かっこよく走りたい。

ランニングシューズはボロボロだけど、気持ちは豊かである。もっといける、もっと速く走れるはずだ。