4通目「もし良かったら、どうぞ」(山本夕紀さん #4)

まえがき

お久しぶりです。全4回のエッセイ、今回で最後になりました。

これまで色んな愛のかたちを考えてみました。「誰かを愛する」というと、相手に直接働きかけすることを思い浮かべていたように感じますが、最近そうではない愛し方に気づいたのです。

それって、なんというか、とても美しいなぁと個人的に感じています。

なので、「愛について語ってくれませんか」の最後のエッセイは、最近気づいた愛のあり方について書いてみたいと思います。

#4通目「もし良かったら、どうぞ」

自分にできることを全うして、何かを生み出す。そして大切な人が、もしくはまだ見ぬ誰かが「これが必要だ」と思ってくれた時に、手に取りやすいように心がけて、そっと置いておく。その行為を、私はとても美しいと感じるようになった。

いきなり少し悲しい話をして申し訳ないのだが、先日祖母のお葬式があった。
父のお母さんのお葬式が行われた。家族葬の小規模な葬儀だった。

私は、もちろん祖母にもう会えないことに涙したのだけれど、それよりも涙したことがあった。
それは棺の中に入れるお別れの品として、父が自分で作ったパンを持ってきていたこと。

その光景に、一心に何かを創るということの美しさと暖かさを感じたのだ。

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