コタビノイクサ(ふつうエッセイ #415)

時代劇を観ていると、たびたび耳にする時代劇特有の言葉がある。

時代考証が入っているとはいえ、現代に翻案されているのが時代劇だ。必ずしも、役者が喋っている言葉が、当時使われていたものとは限らない。

よくよく台詞を聞き分けていると、時代劇の台詞にも流行り廃りがあるように感じる。「かたじけない」「面目ない」あたりは今も昔も頻出単語だ。一方で、「無礼者!」なんかは最近耳にしなくなった気がする。どちかといえば礼を損ねる者が、予め「無礼をお許しください」といって将軍や殿様に進言する場面を見掛けるようになった。

いくら権力を持った人間とはいえ、「無礼者!」なんて叫び散らすのは不自然だと考えたのだろうか。それとも、ちょっとパワーハラスメントを想起させるような表現なので自粛しているのだろうか。その辺の真偽は不明だ。

「こたびの戦」というのも、頻出単語だ。

こたびの戦で〜、と枕詞のように言葉が発せられ、恩賞を得ようしたり、被害全体を把握しようとしたりする。こたびは「此度」と漢字変換できるが、音読すると、なかなか仰々しい響きになって好きだ。

ちなみにローマ字に変換すると「KOTABI NO IKUSA」。

なんか、好きだ。ヤッホーブルーイングから新商品として発売されないだろうか。

水曜日のネコ、僕ビール君ビール、インドの青鬼、正気のサタン、コタビノイクサ。

どうだろうか。ヤッホーブルーイングに限らず、全国でクラフトビールをつくっている醸造家の皆さん。命名権放棄でお使いいただいて構わないので、コタビノイクサ、売ってみませんか?(横展開も可能ですよ、コタビノイクサ@応仁の乱、コタビノイクサ@大坂の陣、みたいな)

この勢いで、会社名も変更しようかしら。

「株式会社TOITOITOは、このたび、株式会社コタビノイクサに変更しました。変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます」

……ちょっと、会社名にするのはどうだろう。敗戦濃厚な感じがしますね。