眠りの深さ(ふつうエッセイ #361)

日本人の多くは睡眠に関して何らかの課題を抱えている。

かなり前から言われてきたことだが、どうやらどの世代にも共通の課題らしい。仕事に追われてきた社会人だけでなく、本来時間に追われる必要のない小学生でさえも、眠りの質が低く、結果的にゆっくりと休めていないそうだ。

僕自身、もはや「いかんともしがたい」と諦めているフシもあるのだけど、眠りが浅くて困り続けている。眠りの質が悪いから、日中も、慢性的な眠気に襲われているのだ。

僕は普段、車の運転をしないけれど、その状況にはホッとしている。こんな状態で毎日運転していたら、たとえ短い距離だったとしても事故は免れないだろう。

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そしてここ数日は、更に睡眠の質が低下している。理由はシンプルで、苦手なスリラー映画を観たからだ。

怖いものは怖い。というかスリラー映画は、観る者を「怖い」と思わせるように作られている。登場人物の極限状態を疑似体験してもらわないことには、世界観が成立しない。あらゆる種類の「痛み」を被せて、メラメラと内外面を燃やしていく。ホラー、スリラーも量をこなせばある程度慣れるのだと思うが、現時点で慣れる気配はない。

先日エアコンが壊れて、窓を開けて寝ていた。薄いカーテンがひらりと風に揺れるのを目にした途端、「ああ、これ誰か入ってくるかもしれない」という恐怖に捉われた。目を瞑ったが、そのイメージは拭えない。家族には申し訳ないが、そっと窓を閉めた。

眠りの深さを100%コントロールすることはできない。ただ、眠りをとことんまで浅くすることは可能らしい。先月から映画に関する仕事を始めたから、ホラーやスリラーの類から逃れることはできない。眠りを浅くしたくはないのだが、眠れないほど怖い=面白いホラー映画にも出会いたいとは思っている。

眠れないほど熱中することがある。それもまた良いものだ。