22歳、ボリビア(鈴木ゆうりさん #1)

気長に待つしかない。
そのまま3人でフランス版の大富豪をしながら、途中でお姉さんがジップロックに入れて保存していたひまわりの種や干した葡萄を分けてもらったりして1時間ほど。

事態が急変したのは午後1時半過ぎ、それまでシーンとしていた空港が俄かに騒がしくなり始めました。

なんだなんだと3人で騒ぎの源である空港のメインロビーへ向かうと、各航空会社のチケットカウンターに詰め寄る大勢のボリビア人の姿。唾を飛ばして職員に詰め寄っています。

事情を聞いてくるとカウンターに向かったお兄さんが頭を抱えて戻ってきました。

「どうしたの」
「今までのフライト、全部キャンセルになったみたい」
「まじで?」
「まじで」

ぐわんぐわんと視界が揺れる。電光掲示板を見上げると、自分が乗るはずだった便の横の文字が”demora/遅延”から”cancelado/欠航”に変わっていました。

詰んだ。頭にこの3文字が浮かびます。

欠航ってどうしよう、だって日本じゃないし。ボリビアーノ航空?聞いたことないよ、振替便、でも14時以降の便に振り返られるのかな、でもどうやって。そもそもサンタクルス行きはあるのかな。ブラジルに行く国際便、取り直したらいくらかかるんだろう。お金もう全然残っていない。そもそもここWi-Fiないし、どうしよう。

フランス人カップルは目的地がかろうじてバスで行ける距離だったので、乗り合いバンで目的地を目指すことに。

「落ち着いて、もし何かあったら、この番号に電話して。」

お姉さんが千切ったメモには+591から始まる番号。でもWi-Fiもない、電波の繋がらないiPhoneしか持っていないわたしにとってこの電話番号をもらったところで、電話もかけられません。

「大丈夫?」
「うん、大丈夫(全然大丈夫じゃない)」
「本当に何かあったら電話してね、あなたの幸運を祈っているわ」

グッドラックと大型バンに乗り込む二人を見送って、いまだに怒号が鳴り響くロビーのベンチに腰をかけ。

「うぇっうぇえっぇっうぇん」

どうしようもないし、どうすればいいかもわからなくて嗚咽が勝手に口から溢れ出す始末。もう救いようがありません。目からは涙、鼻からは鼻水が大洪水。
少しおとなになったわたしからするとリカバリープランはぽんぽん浮かんでくるのですが、お金も知恵もすっからかんだった当時のわたしはだらしなく泣くしか出来ませんでした。

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