22歳、ボリビア(鈴木ゆうりさん #1)

「愛を語ってくれませんか?」

堀さんからご連絡を頂いたのは、師走の中頃。年末繁忙期の真っ只中の心ここに在らずの状態でお引き受けしたのですが、よくよく考えると”愛”について考える時間は早々ないので、良いご縁をいただきました。

”愛”について考えるとしても、プラトンやアリストテレスのように哲学的には語れませんし、名だたる作家のような名文も記せません。強いて誇れると呼べるのは、27歳の六本木OLにしては、ちょっとだけ世界を多く眼に焼き付け、その地を自分の足で踏みしめたことかと思い至りました。
せっかくの機会、わたしにしか並べられない形で、わたしが旅で遭遇したエピソードを通じて”愛”を紐解いてゆく、そんな4回戦にしていきたい所存です。

* * *

本日は、ひとつめのエピソードから。

2017年3月1日の朝。わたしはボリビアのアルカンタリ国際空港でフライトを待っていました。

当時のわたしは卒業旅行と称して世界一周をしている大学4年生。2月中旬からマチュピチュやらウユニ塩湖やらを旅して、次の目的地のブラジルへ向かう真っ最中。アルカンタリ国際空港からボリビア最大都市のサンタクルスに向かい空港泊、次の日の朝5時にブラジル行きの国際便に乗り込む、若さゆえのハードスケジュールです。

数日前に腐った肉を食らい緑色の吐瀉物を生み出すグロッキーな体験をしたのを走馬灯のように懐かしみつつ、全く耳に馴染まないスペイン語のアナウンスを右から左に聴き流す作業に終始しては電光掲示板を見返すを繰り返し。真綿よりか薄汚れた霧雨の塊がどんよりと空港に覆いかぶさっています。なんだか嫌な雰囲気。

午前11時半発のフライトなのですが、11時になっても搭乗手続きがスタートする兆しもなく。この辺りからそわそわし始めるも当時スペイン語を全く話せないわたし。そわそわするだけで終わります。

おそらく眉が極限のハの字になっているわたしを心配したのか、少し離れたところに座っていたフランス人のカップルが仲間に入れてくれました。

「遅延だって、天気が悪いから」
「天気が悪い?でもそんなに雨強くないよ?」
「うん、でもここはボリビアだから」

お兄さんの指の示す方向にいたのは、先進国ではまずお目にかかれないプロペラ機。一体何年前のモデルなのかは気にしないことにします。

南米で遅延はよくあること。これまでの道中で時間ちょうどに出発したのは、たしかに日本を発つ便だけです。

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