ページビュー数は誰のための価値?(ふつうエッセイ #147)

2022年現在、「インターネットを全く利用していない」という企業は少数だろう。

自社コーポレートサイトを有していない企業はそこそこあれど、SNSを含め、何かしらのサービスを使った情報の受発信をしているはずだ。ホームページをつくるのは大変だけれど、SNSなら5分あればアカウント作成ができる。

僕も、SNSを通じて仕事の受発注がなされている。

もともと知り合いだったという前提もあるのだが、SNSで情報発信しつつ、ひょんなことをきっかけにメッセージのやり取りを交わせる環境は2000年以前にはあり得なかった。固定電話を使って闇雲にアポイントを取ろうとする手法(今でもあるけれど)が一般的だったし、またネットワークも限られた人たち同士の特権だった。

*

情報社会になったことで、情報の伝え方、伝わり方も変わっている。

思うのは、数年前に「当たり前」だと思っていた情報の伝え方が、急速に陳腐化してしまうということも往々にしてある。

たとえばページビュー数。Webサイトが閲覧されたページの合計数を表す言葉であり、これが多ければ多いほど「人気がある」サイトだと評価されてきた。だが正しいコンテキストでページビュー数を扱わないと、労力や広告宣伝費の無駄遣いということになりかねない。

また、そもそもそういった数値そのものが、誰の価値なのだ?という問題もある。

「僕らのWebメディアは月間5,000万ページビューがあります」と喧伝したとして。それは誰の価値なのか?という問題に至る。

そのメディアが多くの人に支持されているからといって、Aさんにとって意味のある情報ではないかもしれない。広告主からしても、獲得単価がリーズナブルかどうかは未知数だ。

数値は、あくまで数値であり、それ自体が直接的に価値に繋がるわけではないのだ。

「それって誰のための価値?」と問う習慣をつけよう。それは「僕の仕事は誰のための価値になるの?」と問い直すことにも繋がる。

その繰り返しが、価値創造において不可欠なプロセスになっていくと信じて。