入社前日まで悩んでいた進路、不安を抱えながら就職へ

2年次の秋からは、別の研究室にも足を運びDesign Researchを学ぶ。「口だけ達者なやつは信頼しない、手を動かせ」と先生に発破をかけられた。
「偶然人が混ざり合うシチュエーションをどうやって作るか、ということに関心がありました。Googleのワーキングプレイスの事例を発表したところ、先生から痛烈なダメ出しを受けました。真面目な優等生モードは面白くないと。傷つきますよね」
それでも優莉さんは「全国各地の飲み屋を回ってきたら?」というアドバイスをヒントに、鎌倉にある個人店「山本餃子」に行き着く。7席しかない小規模店舗だが、地元の人たちでひっきりなしに盛り上がっていた。
数ヶ月間、週3日のフィールドワークを敢行。その経験が「小さな空間における人のふるまいから見る地域参画の設計」という卒業プロジェクトに繋がった。
先生からは「学士はここまで、これ以上やるなら修士」と大学院進学を暗に勧められる。だが優莉さんは違和感を抱いていた。
「SFCや海外では、自分の研究は面白がってもらえました。だけど、それ以外の場所ではあまり理解されなくて。それに、自分がどの道を進むか自信を持てなかったんです。行政に就職するのか、建築をするのか、リサーチャーになるのか。どんな道に進むにしてもスキルは足りませんでした。これまで何をやってきたんだろうって、アイデンティティが崩壊しました」
優莉さんは広告会社から内定が出ていた。だけど広告会社で何をするのか、何ができるのか不明瞭だった。
入社日の前日まで悩んでいた優莉さん。心配してくれた恩師には「まず働いてみて、これをやりたいという実感を持ってから修士に行きます」と伝える。
こうして不安を抱えながらの社会人生活が始まった。
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