何かやればかえってくる──内気な少女が積み重ねた小さな成功体験とは?(高円寺で暮らす優莉さん・その1)

「誕生日を告げる」という小さなチャレンジ

転機になったのは中学3年夏。オックスフォード大学のサマースクールに参加したことだった。

姉がロンドンのバレエスクールで2週間レッスンを受けることになり、優莉さんも共に渡英する。

「ついでに優莉も……という理由で、サマースクールに入ることになったんです。英語もできないから誰にも話しかけられない。相部屋のチェコ人もホームシックで泣いていたし、完全に手詰まりだなと思いました」

そしてサマースクール中に誕生日を迎えてしまう優莉さん。最悪の誕生日だと絶望するも、勇気を出して「私、今日誕生日なの」とカミングアウトする。

「そしたら周りのみんなに祝ってもらえたんです。めっちゃおめでとう!って。それをきっかけにスペイン人のグループと仲良くなって、一緒に遊ぶようになりました。授業でも「I don’t understand.」が言えるようになりました。ちゃんと意思表示すると、先生も懇切丁寧に教えてくれるんです」

周囲から内気だと思われていた優莉さんは、小さなチャレンジを経て見違えるように明るくなれた。「何かやればかえってくる」という成功体験を得ることができたのだ。

帰国後、楽しめるかどうかは自分次第と考え、高校も引き続き通学することに。高校3年間でこども新聞の記者を務めたり、ラジオ局のレポーターを務めるなど、課外活動に積極的に参加するようになった。

「学校から帰ってきたら、夕刊をめくるというちっちゃなことを始めました。よくよく新聞を読んでみると「こども記者募集」とか、高校生が参加できるイベントやワークショップの案内が掲載されているんです。もちろん落ちたものもありますが、応募するのは無料なので。まずはやってみよう、というマインドを持てたのは大きかったですね」

1 2 3 4