コロナ禍とタイタニック(松金里佳さん #2)

コロナ禍とタイタニック

2019年12月、
武漢で見つかった新型コロナウイルスは瞬く間に世界中に拡がり、大規模なパンデミックが起きました。

コロナ禍にも、そこにはたくさんの人の選択があったことを思い返します。

救命ボートの席をお金で買った人がいたように、買占めに走る人がいました。
移民の乗客の避難を妨害したクルーがいたように、人種差別や自粛警察が横行しました。

一方で、沈みゆく船の中で職務を全うしようとした人がいたように、ひっ迫する医療現場に立ち続けた人がいました。
残された人の救助のため沈みゆく船に引き返した人がいたように、苦痛を抱える人への支援の動きが広がりました。

わたしたちは、日頃得ている情報から様々な選択をして生きています。時に、誤った選択をし、たくさんの後悔と反省を抱えて生きています。けれど、悲しみや不安によって乱暴な選択をしそうになったとき、一度立ち止まって他の選択ができるのは人間のすばらしさに他なりません。

一度立ち止まる!

と書きつつも、わたしは今日も立ち止まれませんでした。

おじいちゃんに20回目の「iPadの使い方がわからなくなった」ということばを言われ、「前も教えたよ」と言わなくて良いことを言ってしまいました。でも、そんな不親切な孫に、おじいちゃんは満面の笑みで「ありがとう!たすかった〜!」とまっすぐな感謝を伝えてくれます。そんなおじいちゃんにわたしは一生敵わないのだろうと思いました。

わたしもやさしくて、まっすぐな人を目指したい。

そう願うからこそ、ちゃんと立ち止まることをだいじにしたいと思います。まずは21回目の「iPadの使い方がわからなくなった」に備えて。そのことをここに誓いたいと思いました。

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