ラップには、フロウ(flow)という技法がある。
声の高さや強弱、速度に変化をつけて、曲やリリックを印象づけるテクニックのことだ。一般的に「フロー(流れ)」といわれているものとは、ちょっと趣が違うように感じる。
文章を書く際にも、「流れ」というのはとても大切である。
例えば原稿を書くときは、執筆以前に構成を描いておく。構成とは、家でいう設計図にあたるもので、設計がおぼつかなければ原稿もフラフラで倒れてしまうだろう。
……僕はこういった構成と流れを同一視していたけれど、でも、構成と流れとは厳密にいえば異なるものではないだろうか。
改めて、流れとは何だろうか。
川は、さらさらと上流から下流へと流れていく。ゴツゴツした岩場や石もあるけれど、水は、とめどなく海へと向かっていくのだ。この「流れ」は、ちょっとやそっとのことでは止められない。
流れとは自然なものだけど、確固たる意思を有している。柔らかだけど、力強い。「流れに身を任せる」とはよくいったもので、それくらい求心力があるものなのだ。
流れ。
ゆらゆらしているけれど、いざとなったら、流れに身体も心も預けてしまうのか。
流れを止める。そんなに容易いことじゃないんだろうな。