人生を高円寺でやり直す──コロナ禍で手放した「自分」という価値(高円寺で暮らす優莉さん・その2)

仕事が全部なくなったから「左手」を使った

自分の仕事はなくなってしまうのではないか?という危機感を抱いた優莉さん。

幸いなことに、NPO勤務時に繋がりのあった株式会社アソボット代表・伊藤剛さんとの縁でディレクターの仕事に就く。

「コロナ禍で、地域の人たちを巻き込んで仕事をつくるような、これまで打ち込んできた仕事が全部なくなりました。街にいる人たちに会いに行き、関係性を作るようなことができなくなって「あなたの仕事は全部ないです」と否定されたような気持ちになりました」

優莉さんは悲観に浸ることなく「ゼロから始めるなら今しかない」と考えた。

「今まで使ってきた利き手が骨折したみたいな感覚ですよね。そうなって初めて、私は「左手」で何をするんだ?と自問しました。アソボットに就職して、企画とか編集とか、今まで本格的に向き合ってこなかったことをやると決めました」

アソボット代表・伊藤さんは「伝えたいコトを、伝わるカタチに」をコンセプトに、広告や教育、社会課題など様々な領域を横断しながらコミュニケーションデザインを20年以上も手掛けてきた。当事者と非当事者の距離を縮め、果敢にリーチできる仕事のアウトプットに、いつも驚くのだという。

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