深刻な少子高齢化が進む中、学習塾業界はレッドオーシャンと呼ばれて久しい。
公立中学校の英語科教員の経験を持ち、2年前に東京都江戸川区で学習塾C.schoolを開業した風間亮さんに取材をした。
前編では、教育という道を志すに至る風間さんの葛藤について話を聞いた。流されるままに大学入学を果たした風間さん。自身の原体験がもとになって、教育や進路選択に対して強い思いを抱くようになる。
後編の冒頭では、赴任した公立中学校でのエピソードを紹介している。これまで挫折を経験してこなかった風間さんが苦労したのは、生徒と信頼関係を築くこと。「普通に他人に嫌われることがあるんだな」と気付き、逃げ出しそうになったという。中学校勤務を経て、学習塾開業に至るリアルなきっかけについても語ってくれた。
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中学生の信頼を掴めず、逃げ出しそうになった教員時代
認定NPO法人Teach For Japanが展開するフェローシップ・プログラムに参加し、福岡県田川郡の公立中学校に英語教師といて赴任する。だが最初は、生徒と信頼関係を築くのに苦労したという。
「生徒との距離感を間違えていたんです。特に僕が勘違いしていたのは、生徒みんなが英語をできるようになりたいんだ、と思っていたこと。「みんな英語の勉強をして当たり前」「英語力をつけたいはずだ」と。生徒ひとりひとりへの理解が決定的に足りなかったんです」
これまで風間さんは、友人や上司とのコミュニケーションに苦労することがなかった。例えば、彼が続けてきた野球。「野球を頑張ろう」という目的は、部員同士ですんなり共有できる。その上でコミュニケーションが成立し、お互いが何を考えているか理解しやすかった。
「なので良かれと思って行なったケアが押し付けになっていました。勉強したくない生徒に対して居残り指導をしたりとか。ある女子生徒からはずっと無視され続けていました」
30〜40人の生徒と向き合う中学校教員。時間が限られる中で精一杯対応するも、なかなか心を開いてくれない。教職を投げ出そうとしたこともあったという。
「これまで他人に嫌われるということがありませんでした。教員として働いて、普通に他人に嫌われることがあるんだなっていうことに気付きました」