来てなんぼ。五感で実感できる利賀村の魅力
富山県の山間部に位置する利賀村は、東京からは車で6時間かかる。富山市内からも利賀村に向かうには1時間以上かかり、合宿地に到着するまでもひと苦労だった。
アクセスの悪さは来住さんの懸念材料だった。しかしその心配は杞憂に終わる。来住さんが発信した利賀村の魅力に、多くの参加者が興味を持ったのだ。
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トレイルランナーとして海外レースを数多く走る松山優太さんは、利賀村での多くの発見を口にする。
「今回トレイルランで登った金剛堂山は、昨日まで知らなかった山です。そこでの景色は見たことのない絶景で感動しました。宿泊先の旅館「瑞峯」のご主人の話を聞いたり、畑で野菜を収穫する体験をしたり、ランニング以外の楽しさがあり充実した3日間でした」
今回の合宿では、食事で熊肉や鹿肉を使った料理、イワナの唐揚げなどが食事の中に出ただけでなく、イワナの掴み取りなども体験。松山さんが話すように、普段の生活では味わえない体験を、五感で実感できることが魅力の一つだった。
「明日東京に帰って仕事している間にも、ご主人はここで野菜を作って、熊や鹿の猟をしている。そうしたことが同時進行で起こっている。そう想いを馳せられるようになるのは、すごく面白いですよね」
世の中には様々な日常がある。自分の日常を生きているだけでは「出会えない日常」がたくさんあるのだ。
来住さんも体験することの重要性を確信している。
「来てなんぼというか、実際に味わってみて、話をしてみることが大事だと思います。旅行業で働いている私にとって、地域の魅力を伝えることが仕事です。でもやはり、実際にその地域に行く・滞在することが大切だと考えています」
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3日間という限られた時間で、利賀村の良さを100%理解するのは難しい。
それでも、来住さんの「来てなんぼ」という言葉の通り、実際に足を運ばないと分からなかったのも事実。筆者自身も、想像より何倍もの大きな魅力を利賀村に感じることができた。
一方で、長い時間話していく中で、須河さんと来住さんが模索し続けている課題もあることが分かった。
どんな課題があり、須河さんたちがどのように向き合っているのか。後編で詳しく紹介する。