スポーツ選手のセカンドキャリアや競技者としてのあり方が変化し、アスリートの活動にも多様性が生まれている昨今。箱根駅伝に出場した経験を持ち、現在はプロランナーとして競技を続けながら地元で地域貢献活動を行う須河宏紀さんを取材した。
前編では須河さん、中編では富山県利賀村(現・南砺市)で行われた合宿参加者へのインタビューを中心に記事を書いた。
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後編となる今回は、再び須河さんに登場してもらった。須河さんが模索する現在の課題や今後の展望について紹介する。
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完璧でなくても始めること
今回の開催にあたって、須河さんが最も意識したことは「実現させるまでのスピード感」だったと話す。
合宿開催には、地元で協力してくれる方が不可欠だ。
須河さんの地元で開催するとはいえ、須河さん自身が普段から利賀村にいるわけではない。来住裕也さんもHISでの本業となる仕事を抱えている。
そんな体制において須河さんが感じたのは「行動しないと誰も協力してくれない。完璧に決まらなくても、小さく実験的に積み重ねることが大事」ということだ。
例えば今回、宿泊地・旅館「瑞峯」。コロナ禍で売上が減っているという課題と、ランニング合宿を成功させたい須河さん、来住さんの思惑が重なった。
野菜の収穫など、「瑞峯」のご主人で気軽に実行できるアイデアを体験コンテンツとして企画する。参加者のリアクションも上々だった。
来住さんは、安堵と共に合宿を振り返る。
「コロナ禍ならではの難しさはありましたが、参加者に魅力を感じてもらった実感があります。開催して良かったなと思いましたし、地元の方も含めて多くの方が繋がれたのも、今後に活かせる点だと思います」