スポンジをお湯に浸ける(ふつうエッセイ #523)

知る人ぞ知る……というのは大袈裟かもしれないけれど、油などが原因で泡立たなくなったスポンジは、しばらくお湯につけておくと、また泡立つようになる。

この「技」を知ったとき、それこそ大袈裟でなく、僕は小躍りするような喜びを感じた。

これまで、何度か「あ〜しまった、うっかりスポンジに油を吸わせてしまった」という後悔と共に、スポンジを無駄にしてきた。それが、ちょっとの工夫で、また新品のように使えるようになるのだ。

人間も、銭湯やサウナに入ると、新品のように気持ちを新たにすることができる。これは大袈裟かもだけど、僕の近所の銭湯では、身体の回復を図るべく足繁く銭湯に通う老若男女が多い。銭湯に行ったくらいで身体が回復するなら儲け物だが、確かに僕も、銭湯に行くと肩や腰が軽くなる感覚を覚える。だから満更でもないのだろう。

お湯に浸けるだけで、500円払って銭湯に行くだけで、心や身体を新たにできる。

大袈裟でなく、儲け物だ。そんなに簡単に儲けられるなら、何度だってやり直そうと思えるはずだ。