爪切り(ふつうエッセイ #155)

いつからか爪の伸びに敏感になってしまい、1週間に二度ほど切らないと気持ち悪くなってしまった。

仕事の大半は、MacBookに向かってパチパチとタイミングすることが多いので、指先の感覚として引っ掛かりを感じると、途端に集中できなくなる。

集中力の問題では?と思わなくもないけれど、爪を切るだけで作業効率が変わるのであれば、もちろん爪を切る。人生で爪を切る時間を総合したら、いったいどれくらいになるのだろう。

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2015年、DeNAベイスターズの土屋投手が戦力外通告を受けた。

そのときの土屋さんの発言が今も記憶に残っている。

https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2015/11/19/kiji/K20151119011533220.html

「左手の人さし指と中指の爪はヤスリで削っていたが、無意識に爪切りを使って野球人生が終わったと思いました」

スポニチ Sponichi Annex「DeNA土屋 引退を決意 爪切りで「野球人生が終わったと」

爪の切り方ひとつで、人生を変える決断をする人もいる。

たかが爪切り、されど爪切り、なんて手垢がついた表現でまとめるつもりはないけれど。何かモヤモヤ悩んでいたときに、爪の形を見て「今日は仕事するのをやめよう」と言っても、あながち間違いではないのではないか。

神は細部に宿る。

そうであれば、爪の中にも神様の片鱗が留まっているかもしれない。