走ることの外に社会がある。競技が成り立っている背景を学びたかった
「競技外のことに目を向けることの方が重要で楽しいんですよ」
意外だった。競技よりも、競技外のことに「楽しさ」を感じている。
「走ることの外に社会があって、競技が成り立っている背景の社会のことを学ばないといけない。そう思って学び始めましたが、続けていくうちに社会のことを考えるのが楽しくなったんです」
この合宿で富山に来る前にも、金沢で伝統工芸に携わる職人の仕事を見学したらしい。彼らの仕事の課題を解決するにはどうしたらいいかなど、日々、ふと目に入ってきたものに対して思考するようになったという。
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たとえ本人がいなくても、利賀村での活動が「仕組み」として成立するようにしたい。
実際、須河さんは年間の半分近くをケニアでのトレーニングに充てている。「こんなことができるのではないか」と構想が浮かんだときに、実際にやってもらえそうな人に声掛けできるようにしているとのこと。まさに仕組み化だ。
仕組み化することで自分の負担を減らし、地域全体で取り組んでいくことが増えていく。必ずしもビジネスとして成立するとは限らないが、試行錯誤の積み重ねになり、今後のキャリアやビジネスで答えを出していくための初手になる。
「とにかくコツコツと時間をかけて続けていく」と話す須河さん。模索は続いていく。
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「利賀村のファンを増やしたい」という想いから始まり、実現した今回のランニング合宿。
周りの人々の協力を得て形になったが、まだ始まったばかり。今後どのように変化していくのか、筆者もランナーとして、利賀村のファンの一人として注目したい。
須河さんのチャレンジと模索はこれからも続く。筆者もできることがあれば協力していきたい。そんな充実感で満たされた3日間だった。