可能性は狭めない。コロナ禍で得た「この役は私にしかできない」という確信と、俳優としてのこれから(俳優 黒澤リカさん・後編)

コロナ禍になって3年目に突入する。
メディアでは、ダメージを受けた業界の悲哀が毎日のように報じられているが、エンターテインメント業界においても例外ではない。

前編では、黒澤さんが俳優になるまでの経緯を中心に話を伺った。後編ではコロナ禍を経て、「私は俳優の仕事を続けていける」と確信を抱いた理由などを紹介している。俳優として、人間として自分を見つめ直した黒澤さん。これからどんな仕事をしたいと考えているのか、ぜひ読んでみてほしい。

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サイコパス役の破綻に、共感できる理由

黒澤さんの演技について言及するのは、少し緊張する。

筆者が観た作品のほとんどで、黒澤さんは「幸せでない女性」を演じている。スクリーンに映る黒澤さんは目を覆いたくなるほどの不幸を背負っているが、不思議とそれらの役がハマり役なのだ。

こちらの緊張を察してくれたのか、黒澤さんは自らの演技のことを笑いながら話してくれた。

黒澤 リカさん(以下、黒澤)「真剣に考えてるときと、笑ったときの表情の差が大きいとよく言われます。だから、幸せと不幸せとで振り幅のある役が多いのかもしれません。
幸が薄いっていうより、幸せから不幸せに堕ちていくような役が合ってるみたいですね。若くして夫を亡くす役とか。なぜか私は死なずに生き残ってしまうんですけど」

意外なことに「どの役も、プライベートの私と完全に違うわけではない」と話す黒澤さん。自分の意思で大学や進路を決定してきたことに触れながら、演じる役との共通点を話してくれた。

黒澤「例えば、無差別に人を殺すサイコパスの役を演じたことがあります。でも、演じづらさはなかったんです。
『この人を殺したら私は幸せになれる』って、普通に考えたらおかしいですよね。でも、彼女なりの筋は通っているんだと思います。本人の中では揺るぎなく正義とつながっている。プライベートの私は『決めたことは絶対にやる』という頑固な性格です。もちろん人は殺しませんが、筋の通し方には共感できる部分もありました」

(短編作品「表情」(監督・重政良太)より)
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